デスクワークをしている人やガジェオタなら必ず通るであろうキーボードの沼。
そしてその沼に必ずあるのがキーボードの最高峰とも言えるHHKB。その至高の所以とは何か。「プロ以外はお断り!」と感じる程に初心者にはとっつきにくいキーボードではあるが、実際のところはどうだろうか。
その理由も含めて今回は記事内で丁寧にレビューしていきたい。
目次
HHKBの歴史
最近はYouTuberのおもちゃと化している感も少しあるだろうが、個人的に驚いたのはHHKBの歴史自体はかなり古く、初期型に関しては1996年に登場している。
HHKBでは有名な「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない」と言う理念のもと生み出されている。
今の時点でも26年経過しているこの歴史あるキーボード。※2022年現在
そして現在でも採用されている「静電容量無接点方式」が採用されたキーボードが発売されたのが2003年。
しかもそんな歴史あるキーボードが石川県の会社であり、国産であることに驚いた。最近のこういったガジェット関係は海外製なことが多いから、個人的には逆に国産であることが渋く感じて大きな魅力に感じた。
キーボードの基礎知識
まずキーボードを選ぶ際にはいくつか見るべきポイントがある。
選ぶ際のポイント
- キースイッチ
- 押下圧
- 接続方式
- キーピッチ
- キーストローク
基本的にこの5つが主なポイントになってくる。
キースイッチ
キースイッチとは?
いくつか種類もある為、それぞれの特徴を簡潔にまとめていきたい。
メンブレン
メリット
安価で買えるものが多い
静音性が高い
デメリット
- 接点のゴムの劣化によって打鍵感の変化
- キースイッチの寿命が比較的短い
メカニカル
メリット
- 軸の種類が豊富にある為自分好みの打鍵感を選びやすい
- キースイッチの寿命が長い
- 打鍵感に変化が起きにくい
- 反応速度が速いものが多く、ゲーミング用途で使われることが多い
デメリット
- チャタリングの可能性
- 価格が高価になる
- 打鍵音が大きいものが多い
パンタグラフ
メリット
- 筐体が薄くできる為、ノートPCでも用いられる方式
- 浅いストロークで軽い打鍵感
デメリット
- 浅いが故に疲労を感じる場合もある
- 耐久性が低くなりやすい
静電容量無接点
メリット
- 接点を持たないため耐久性が非常に高い
- キーの跳ね返りがあり疲れにくい
- 独特の打鍵感は唯一無二で根強いファンが多い。
デメリット
- 価格が非常に高価
- 実機がほぼ試せない
- キーボードの高さが出てしまう為、パームレストは必須
- 選択肢が少ない
このようにひとえにキーボードと言っても種類は本当に様々。それぞれ好みの部分も大きい為、できる限り実機に触れて用途に合わせて選んでいきたい。
キー荷重
実際のキーの重さを指す。
一般的には軽いもので35g。ノートPCのキーボードなどでは少し重いもので60g程度になってくる。
キー荷重に関しては、押す感覚と疲労度に影響してくるからしっかり見たいところ。
ただしこればっかりは軽いから良いだったり重いから良いというものではないので注意してほしい。
軽ければタイピングミスを起こす可能性が上がるし、重ければ長時間タイピングでは疲労度が増す。これらの要素を加味した上でキー荷重の最適解を見つけて欲しい。
接続方式
現在接続方式は大きく3つある。
それぞれの特徴を簡単におさらいしていきたい。
Bluetooth
- デバイス間の切り替えが簡単に行える。
- スマートフォンやタブレットにも使用できる
- 電池・バッテリー管理は求められる
USBレシーバー
- 遅延がなく使うことができる
- 基本的にはデバイス感の移動は不可
- USB端子を一つ消耗する
有線
- 接続が最も安定する
- 線が煩わしい
今は無線の技術も進歩しており、ゲーミング用途であっても無線が主流になってきている。予算は上がる可能性があるが、余程の理由がない限りはUSBレシーバーかBluetoothがおすすめだ。
キーピッチ
キーピッチとは?
大体のキーボードがキーピッチは15〜㎜19㎜程度の幅がある。
手が小さければ、キーピッチの狭い物を選ぶと指の移動が少なくダイピングが快適になる。反対に手が大きい場合は、キーピッチが広くないとタイピングミスも増えてしまい窮屈な印象になってしまう。
想像以上にタイピングしている際に気になるポイントではある為、量販店などで実際に触れてみて自分が良いと思う物を探して欲しい。
キーストローク
キーストロークとは?
ノートPC等の薄いキーボードでは1㎜程度の物もあり、1〜4㎜が平均的なキーストロークとなっている。
一般的には深いキーストロークだと誤入力を防ぐことができ、浅いと速い打鍵が可能とされている。
ただこれには注意が必要だ。
浅いキーストロークだとスピードは上がるが、自分の力だけでキーを押して次のキーに移動していくことになる為、長時間の打鍵においてはその限りではない。
深いキーボードの場合にはキーボードを打ち込んだ際にキー自体が指を押し戻してくれるような動きになり、次のキーへの移動がスムーズになる。これが長時間高速タイピングをしてく中では疲労度に大きく影響してくる。
最近ではMacのイメージもありスタイリッシュな薄型のキーボードが流行りではあるが、業務用は競技などでは深いキーボードが好まれている理由を今一度考えていきたいところだ。
また、キーのストロークとは別にアクチュエーションポイントと呼ばれるどれくらいきーを押すと反応するかの基準もある。ゲームや正確性が重要な作業にはこの反応までの感度もできればみて欲しい。
何故HHKBを購入したのか
HHKBを選ぶ人は必ずと言ってもいいほど「静電容量無接点方式」を求めて辿り着いているだろう。
キースイッチの解説の際に出てきたが耐久性が高く、その打鍵感からファンが多いキースイッチだ。
現在この静電容量無接点方式のキーボードを選ぶ際には選択肢はほとんどなく、今回紹介したHHKBと業務用の定番リアルフォースの2種類と言っても過言ではない。
どちらのブランドもハイエンドモデルは電池か有線で駆動する。バッテリーを搭載してしまうと寿命が決まってしまう為、電池であれば交換のみで使い続けることができる。キーの耐久性と合わせることでこれらのキーボードが一生物である大前提は同じだろう。
この選択肢の狭さはデメリットでもあり、デザインの好みへのマッチや市場価格の高騰にも繋がっていると考えている。
ただ、根本的な会社としてはどちらも「PFU」という会社が製造しており、その中のブランドの立ち位置の違いといった形だ。
では実際に私がリアルフォースと何を比較したのかというと、それはデザインとキーボード自体の大きさだ。
HHKBは見ての通り、キーボードの色から刻印までかなりシンプルで洗礼された印象を受ける。リアルフォースも黒の刻印もあるのだが、英語配列のみと制約があり選択肢がない。
しかもHHKBにはキーボードの極地とも言える「無刻印」のモデルが存在する。
一般的には何の罰ゲームか分からない何も印字がされていないキートップだが、極めた者からすればこれほどミニマルでシンプルなデザインは存在しない。
また主にエンジニアなどの効率をお求めて作られたこのHHKBは無駄なキーをできる限り無くし、ホームポジションを可能な限り崩さないでタイピングが続けられるようになっている。
2つ目の理由となるキーボード自体の大きさに関してだが、HHKBはA4用紙の半分強というかなりコンパクトな大きさだ。
対してリアルフォースはテンキーレストフルサイズといった一般的な大きさの2種類が用意されている。
これはリアルフォースが悪いわけではなく、個人的な用途的にはHHKBに軍配が上がった形になる。私はブログの他にも動画編集や画像編集も行う為マウスの利用頻度も比較的高い。
そうなってくるとキーボードのサイズが大きいと手の移動が大きくなり、腕が疲れてくる。自分の腕すらも重いのかと少し悲しくなったのは否めないが、長時間のデスクワークの中でじわじわと実感していた部分でもあった。
だから最後の最後まで悩んだが、私はテンキーレスキーボードよりもコンパクトなHHKBを選んだ。ちなみに価格は同じようなモデルで比較すると、リアルフォースが34,560円でHHKBが36,850円だからそこまで大きな差はないが、死ぬほど高いことに変わりはない。
ただ、数字入力が多い方や手の移動が許容できるならば、間違いなくリアルフォースの方がキー数も多くて便利だし早く手に馴染む。だからサイズ感に関してはしっかり吟味して欲しいところでもある。
その他にも個人的に不要ということで挙げてないが、リアルフォースの場合はいくつか選択肢が増えたりプラスのメリットもいくつかある。
- アクチュエーションポイントを4段階で変更ができる
- キー荷重が等荷重と変荷重で選べる
キー荷重などが購入のポイントになったりするようならリアルフォースは大きな魅力になる。
HHKBのモデル比較
ここまででキーボードからHHKBについて語ってきたからイメージは大体分かったと思う。ここからはHHKBの購入したモデルについての紹介をしていく。
購入したモデル
HHKB Professional HYBRID Type-S「日本語配列」
購入したType-Sは高速タイピング性(speed)と静粛性(silent)のSからきている。
HHKBにおいてType-Sは最上級グレードに当たり最高のキーボードではあるが、お値段が36,850円と死ぬほど高い。※2022年10月時点
当初は予算からも通常のHYBRIDモデルを検討していたのだが、書斎は主審室の隣で夜のタイピングがうるさくなる恐れもあった為にType-Sを選んだのも大きい。
実使用感
配列
ここからは実使用感についてのレビューなのだが、まずは配列に関して。
HHKBにおいては配列の違いがかなり大きく出てくる。これがネックになってHHKBを断念する人が出てくるくらいだからじっくり読み進めてもらいたい。
最大の違いはなんといっても矢印キーの有無にある。
HHKBに関しては散々特殊なキーボードだと紹介してきたが、極め付けには矢印キーが無いときた。もうここまでくるとかなりのガジェオタでなければ、HHKBの良さを理解する前に買わないことを決めるだろう。
ただ矢印キーがないのは英語配列のみ。日本語配列には矢印キーが備わっている。
まあ英語配列も独立した矢印キーがないというだけであって、Fnキーとの複合キーでは矢印操作ができるようにはなっている。
この複合キーでの矢印に関してはYouTuberは使えば慣れるという意見も結構見かけるのだが、これをポジティブに捉えていくのは危険。
HHKBの情報を発信しているようなYouTuberはゴリゴリのエンジニアであったり、超が付くほどのマニアの声がほとんどだ。
もちろん慣れるまで根気強く使い続けてこれから人生を共にしていくという方はいいが、ただでさえ特殊なキーボードでもあるHHKBだからこそ配列くらいは無難でもいいのではないだろうか。
私は日本語配列で矢印キーがあることで、思った以上にスムーズに使い始めることができた。即ポチするようなくらいでなく悩んでいるならば英語配列はやめておこう。
私は止めた。
打鍵感
打鍵感は色々なところでも言われているが、これが本当に気持ちいい。
ただこれは気のせいかもしれないが、開封した一番最初の時よりも2日目3日目となったときの方が打鍵感の良さを体感できた。
本当にスコスコというか何とも言えない摩擦感と共に、軽いキータッチが癖になる。
感覚もだが、その打鍵音も耳障りにならない音で快適なキーボードだ。
Bluetooth接続
Bluetooth接続は規格が4.2ということもあり少し心配していたが、接続は爆速で不便は一切ない。
Bluetoothでの接続には最大で4台まで、先述の表にもあるHYBRIDモデルだと有線と合わせて合計5台まで接続が可能だ。
私の場合はMacBook、iPhoneと接続しており瞬時に切り替えられる。切り替えは複合キーで行い、Fn+Control+数字の1〜4でそれぞれ接続が可能だ。有線の場合はFn+Control+0になる。
今後iPadの導入なども検討しているが、iPadにも接続ができる為気軽に文章を打ち込んだりがよりしやすくなる期待もしている。
注意点
復帰させるには電源を入れ直す必要があるのだが、MacBookをクラムシェルで運用している際にはHHKBの電源を入れればMacもスリープ状態から復帰させられる。
これまではUSBレシーバーのキーボードを使用した為、スリープ復帰には何かしらのキーを押せばよかったのでこれは少し手間に感じはするが許容範囲ではあった。
ショートカットキー
正直ショートカットキーも日本語配列なら矢印キーが独立しているからそこまで苦になるようなものはない。
今後使い続けていく中でショートカットキーが染み付いてさらに使いやすくなると思うとむしろ楽しさの方が上回るから、長期的に楽しんでいきたい。
これに関しては英語配列にしなくてホッとしている。
まとめ
こんな人におすすめ!
こんな人におすすめ!
- 長期で同じキーボードを使って極めたい
- 最高にミニマルなデザインが好き
- ての移動を最小限にしたい
- 接続機器が複数ある
- 静電容量無接点方式の打鍵感が欲しい
- 日本製が好き
- MacとWindowsの2つのOSを使っている。
巷で言われているのが全員におすすめはできないという意見が多いのだが、そんなことはないと思っている。ポイントとしては、英語配列にしなければ複合キーでの操作もかなり部分的になる。しかも今パソコンを使う人は動画編集や画像の編集をする人も多いから手の移動が最小限にできるのは大きなメリットだと感じる。
打鍵感が良いのは本当にそうなのだが、如何せん実機を試すことがほぼ不可能と言ってもいいくらい展示場所がない。こればかりは数々のメディアでのレビューを信じてもらうしかないだろう。
逆にこんな人は要注意だ。
こんな人はちょっと待って!
こんな人はちょっと待って!
- エクセルなどのキー操作が多い
- 複合キーは使いたいくない
- タッチタイピングは全くできないから印字は見たい
- 配列が特殊なのがどうしても気になる
これらに当てはまる人は是非リアルフォースを検討してみて欲しい。
リアルフォースならテンキー付きも選べるし、テンキーレスであってもキーの配列は基本的なものだからこれまでと何ら変わらないイメージで最高の打鍵感や耐久性が手に入るだろう。
昔は有線しかなかったリアルフォースだが、今はリアルフォースもBluetooth対応の物も出てきた。だから接続方式よりも、この配列やキーボードの大きさで選ぶのが一番無難な選択だと思う。
少しでも使用感が怖いならリアルフォース。一つのガジェットとして唯一無二の操作感も楽しみたいならHHKBが最終的な答え。
好みは分かれるし価格面がどうしてもひっかかるとは思うが、静電容量無接点方式のキーボード自体は万人におすすめしたい大満足なモノだと思う。
- キーボードの沼を終わらせる
- 単純なデスクワークをモノから楽しく変えていく
それくらいPC生活を変えてくれるだろうからみんな飛び込んで欲しい。
さいごに
色々ガジェット的な良さがあってこそですが、日本製がいいモノだということが素直に嬉しくて、更に愛用したいと思わせてくれました!
確かに金額は死ぬほど高価で破産寸前なくらいかなり迷いに迷って思い切って購入しましたが、バイアスがかかってるのを加味しても本当に楽しい最高のガジェットだと思います。
2年くらい前までは「キーボードに6,000円?高くてあり得ねぇ!」とガジェットに関して理解に苦しむくらいでしたが、知れば知るほど魅力的な世界で今ではどっぷりです。あっ、気がつけばこっち側にきてしまってる…(笑)
そんなこんなで同じような被害者…いや、ガジェットが大好きな人がこの記事をきっかけに少しでも増えれば嬉しいです!
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ではまた!